星は神様の「のぞき穴」

赤坂友昭／写真家・映画監督

モンゴルの草原で遊牧民と暮らしていたとき、夜になると毎日宙を見上げた。地平線から昇り地平線へと沈んでいく星々は、この地球が宇宙を旅していることを伝えていた。視界いっぱいに広がる満天の星々、その光で人の影が大地にできるほど宙は星で満ちていた。

草原で星の話を聞きたいと友人にたずねると、遊牧の仕事が終わった天幕の中でロウソクの灯を頼りにこんな話をしてくれた。　

神様がこの世界を創ったとき、すべては光に満ちていた。最初は、明るい世界を喜んだ生きものたちも、動き続けて休むことができず次第に疲れ果てていった。そこで、神様は一日の半分に天幕をかけて闇を創ってあげることにした。すると夜ができた。生きものたちはようやく静かに休めるようになった。

しかし、天幕をかけたことで、夜の間は彼らがどう暮らしているのか見えなくなってしまった。困った神様は考えた。
「天幕に穴を開ければ下の世界が見えるかもしれない。」
神様は針を使って幕にたくさんの穴を開けることにした。穴からは上の世界の光が漏れ、天幕がかかった真っ暗な空にひとつ、またひとつと小さな光が射しはじめた。光は「星」と呼ばれるようになった。星はそうしてできたそうな。

星は神様の「のぞき穴」。それゆえ、群星のプレアデスは神様がよく見たくて沢山の穴を開けた大切な場所だし、もっと見たいときに天幕をナイフで切り裂き、チラッと覗くその瞬間が流れ星になるのだという。

星の向こうには、いつも神がいて私たちを見守っている。草原の民が教えてくれた星の物語だ。