毎日が新しかった1960年代の時代性と現代の高性能の融合。新作「ダイバー1964 2nd エディション」を解き明かす

2022年7月21日

出典:岩泉町龍泉洞事務所


オリエントスターのブランド誕生70周年を祝う2021年に発表され、発売と同時に完売した「ダイバー1964 1st エディション」に続いて、1964年の「カレンダーオートオリエント」のオリジナルデザインを再現しながら現代的にスペックアップした「ダイバー1964 2nd エディション」が早くもこの夏に登場。第2弾の特長とは、そして現代のライフスタイルにフィットするダイバーとは。商品企画担当の田邉大輔、デザイン担当の久米克典が語り明かします。

文: with ORIENT STAR 編集部



1964年はオリエントのダイバーデザインの幕開け


――「ダイバー1964」の第2弾「ダイバー1964 2ndエディション」がさっそく発表されますが、ベースとなるオリジナルモデルは何ですか。

田邉大輔(以下、田邉) 第2弾は、同じく1964年に発売された「カレンダーオートオリエント」の現代版です。1960年代といえば、高度経済成長を背景に日本全体が躍動感に包まれ、ライフスタイルや価値観も多様化しつつあった時代です。そのような時代に生まれた「カレンダーオートオリエント」は、ドットインデックスや時分針に蓄光を用いたり、回転ベゼルを採用するなど、現代のダイバーデザインの幕開け的なデザインが見て取れます。そういう特長を現代によみがえらせることにポイントを置きました。

――今回も1stエディションの場合と同様に過去の資料を調べ、実機を見ながら開発されたそうですが、現代化にあたり生かすところ、改良点などはどこにありましたか。

田邉 1964年のオリジナルモデルを見たときに、ただ懐かしいというだけじゃなくて、今、着けたいという感覚はありましたね。さらに多様化が進んだ現代でも非常にマッチしたダイバーというか、オンでもオフでも使える相棒のような存在ですね。マッシブでかなり武骨な最近の本格ダイバーズウオッチとは異なり、オリジナルモデルは、ケースにりゅうずガードがなく、デザインも比較的シンプルで時計らしい時計という表情で、どこか素朴で普段使いもしやすいダイバーという印象を受けました。そこがかえって現代風に見えるのかなと思い、しっかり踏襲しようと考えました。

1960年代に生まれ、現代でも存在感を示す建築物をバックに。「ダイバー1964 2ndエディション」は、「カレンダーオートオリエント」のデザインエッセンスを受け継ぎながら現代でも違和感ないデザインに昇華された


――第一印象ではダイヤルのミラーブラック仕上げが新鮮です。

田邉 60年代というと、例えば車のメッキがぴかぴかしていたり、その他のプロダクトも鏡面仕上げのものが非常に多いですよね。オリジナルモデルも、実は非常につやのある文字板を採用していました。今回のモデルでもそれを踏襲したミラーブラックのダイヤルを採用しています。これに合わせて回転ベゼルの表示板も鏡面仕上げです。マットより高級感があり、新鮮に見えるのではないかと思います。

――仕上げ処理にはどのような手法が使われているのですか。

田邉 通常よりも少し厚めのクリア塗装を施しまして、より透明感があるといいますか、みずみずしい黒という感じを出しています。あとはインデックスに肉盛りのルミナスライトを入れて、とかく平坦になりがちなダイバーの文字板が立体的に見えるようにしました。

つややかなミラーブラック仕上げのダイヤルは大きな特長の一つ。時分針や秒針が落とす影も美しく映す


――41.0㎜のケースも普段使いに適した程よいサイズ感です。

久米克典(以下、久米) オリジナルの良さを踏襲し、現代の本格ダイバーのスペックを満たしながら、いかに今のトレンド感にマッチさせるかというポイントが、このサイズ感っていうところに集約されている気がします。開発で一番難しかったのは、本格ダイバーとしてのスペックを出すと、機能に即したそれなりのサイズも必要になるので、この機能とサイズの折り合いをどうつけていくかでした。サイズ感にすごくこだわったという思いは、開発メンバー全員にありましたね。

――開発の過程でいくつも試作して検討したのですか。

久米 オリジナルモデルの完全復刻を望む声もあれば、ダイバースペックを満たしながらオリジナルを現代の商品としてよみがえらせたいという意見もあり、いろんなサイズのプロトタイプを作って議論した中で最終的にこのサイズと200m空気潜水防水(ダイバー)に落ち着いたのです。

田邉 議論はしましたが、オリエントスターというフィルターを通して、本格的かつ現代にマッチしたダイバーズウオッチをお届けしたいということで、ISO規格準拠はマストであると考えました。その上で、ケースのコンパクトさなど、いかにオリジナルの「カレンダーオートオリエント」の魅力を重ねていけるかに力を注ぎました。

「ダイバー1964 2nd エディション」は全点、ムーブメントをケースに収めた状態で防水検査が行われる


――だから、外観の印象は復刻に見えても、ダイバーズウオッチ関する国際標準化規格ISO6425に準拠する200m防水ダイバーなのですね

田邉 このISO規格準拠ダイバーをぱっと見ただけですと、「防水時計」なんだなと思う方も多いかと思います。実際、防水時計には違いないのですが、本格ダイバーともなれば、防水性以外にも耐衝撃性などさまざまな要件を満たす必要があります。昨年発表の1st エディションの場合もそうでしたが、耐衝撃を考慮した専用ムーブメントを使うなど、ダイバー用にかなり手の込んだ改良をしなくてはなりません。それと同時に、サイズをコンパクトにするという、真反対のことにも取り組まなくてならない。ダイバーはすごく制約が多くて、それをクリアするのにデザインのところでどれだけプラス、マイナスしながらバランスを取るかが難しく、開発で苦労するところです。

久米 実はダイバーって、耐衝撃性を調べるために落下試験をするのです。たとえば今回のモデルの針の形状ですが、先端を太くしたいと思っても、あまり太くすると根元の細くなった部分に力がかかって折れやすくなってしまう。そうして最適な形を試しながらダイバー基準に沿った形状に仕上げていくわけです。このように通常の時計とは違う厳しい要件がある中で、いかにオリジナルのデザインに近いものを再現できるか、そこは設計技術とデザインとのせめぎ合いであったと思います。

デザインと耐久性を両立するために何度も検討された針の形状。その上には50時間駆動のパワーリザーブインジケーターが見える


――性能では紛れもない本格ダイバーで、パワーインジケーターが付いているのも独特ですね。

久米 たしかにパワーリザーブ付きダイバーはめったない。オリエントスターならではの特長ですね。

田邉 12時位置のパワーインジケーターはオリエントスターの規格で、ひとつのアイコンです。これはしっかり大事にしていきたいと思いますし、踏襲していこうというのはありますが、ただデザイン的には、パワーリザーブインジケーターを入れることによって、歴史に由来するダイバーの雰囲気が一気に現代的なほうに振れてしまい、表情も変わってしまうので、賛否両論ありましたね。そのあたりどうバランスをとるのかは、久米もかなり吟味した点でもあったと思います。

久米 パワーリザーブインジケーターの機能を満たしながら、極力目立たないように、ちょっとバランスには苦心しましたね。従来、オリエントスターのほかのモデルではこの扇型をアイコンにして展開していますが、ここではアプローチを変えて、あえて真逆のことをしているのです。

――今回のモデルではメタルバンドとともに、付属のシリコンバンドにも特色がありますね。

田邉 1960年代はメタルバンドも非常にアグレッシブなデザインが多い時代でした。1964年の「カレンダーオートオリエント」に付いていたのも、メタルバンドの中央の列にピラミッド型の突起が連なる独特のデザインでした。そのアイコン的なデザインをどこかに残したいという思いもありました。ただダイビングシーンを想定した際に、メタルバンドにエッジの効いたデザインを取り入れると使いづらいということから、シリコンバンドにオリジナルのデザインを踏襲しました。

久米 ダイバーのバンドというと波の形状というイメージがすでにできあがっていると思いますが、ウレタンには伸縮性があまりないので、装着しやすいようにあのような波の形になったのですね。今は、シリコンの品質が非常に良くなり、伸縮性や強度もあるので波の形状でなく新しいデザインも可能です。そこで、かつてのメタルバンドにあったピラミッド型の意匠をうまく生かすならシリコンバンドだと思い、ちょっと遊び心を入れてデザインしてみたわけです。裏面も水抜けを意識したデザインにしながら、オリエントスターのロゴを入れたりしています。

ステンレススチールバンド(上写真)には、長さの微調整が可能なダイバーズエクステンション構造と、誤操作を防ぐプッシュダブルロック三つ折式を採用。シリコンバンド(下写真)はピラミッド型の突起が特徴的な「カレンダーオートオリエント」のメタルバンドを再現した


――では、この新しいダイバーをどのように着けて楽しんでほしいとお考えですか。

田邉 コロナ禍で在宅や場所を問わないワークスタイルも増えてきて、ビジネスファッション自体が変わってきています。少しきちんとした格好をしていれば、スーツを着てなくてもいいという時代になり、時計選びも少し変わってきたと感じます。今までは仕事で必須の時計でしたが、カジュアルでも着けられる、そんな時計が好まれるようになった。今回は、シーンを選ばないというか、たとえば邪魔しない時計っていうか、常に相棒として持っていたい時計とは何かを考えました。しっかりとした防水時計で、サイズもコンパクト、そしてドレッシーにもカジュアルにも見えるという時計ですね。なので、ばりばりのアウトドアシーンで着けるというよりは、普段にさらっと気兼ねなく着けて楽しめるダイバーズウオッチをイメージしました。

――今のライフスタイルに合ったスポーティかつドレッシーなダイバーズというと、もうひとつ、オリエントスターらしい美しいカラーダイヤルのモデルもありますね。

久米 オリジナルモデルが持つミラー仕上げの美しさを再現したブラックに対し、このモデルは龍泉洞の神秘的なグリーンが際立つように、あえてハーフマットに仕上げました。今回はこの龍泉洞の独特のグリーンと、吸い込まれるようなグラデーションをいかに表現するかという明確なモチーフがありましたから、その表現には本当に苦労しました。結果できあがったものを見ると、龍泉洞の美しさはもとより、本格ダイバーだけど着けやすいモデルに仕上がったと感じています。

田邉 本格ダイバーだけど着けやすいというのも、クルマのSUVに近いかもしれません。SUVなのに街中で似合うデザインやカラーリングにも同じ流れが感じられます。クルマのイメージカットも街中の写真が増えていますし。

久米 本格的なクロスカントリーの、ラダーフレームの四駆なのに、現代のSUVのカッコよさが、織り込まれているような考え方ができるのかなって思います。

田邉 シンプルな3針モデルやクロノグラフにしても、時代によってけっこうデザインが変わってきましたが、ここまで基本的なデザインが変わらないのは、おそらくダイバーくらいしかないですよね。そしてダイバーズはまたルーツも重要といいますか、オリジナルモデルの開発にまつわるストーリーや、うんちくが非常に好きな人も多い。そうした愛好家の方にもオリエントスターのダイバーをもっと知っていただきたいと願っています。現代のダイバーデザインの幕開けとなった歴史的モデルからインスピレーションを得た「ダイバー1964 2ndエディション」がそんなきっかけになれば嬉しいですね。

  田邉大輔。WP事業戦略推進部所属 。2004年、オリエント時計に入社。営業などの業務を経て11年に商品企画の部署へ異動。以降、主にオリエントスターのモデルの商品企画を担当する
  久米克典。WPデザイン開発部所属。2001年、セイコーエプソン入社。12年からオリエントの一部のモデルのデザインに携わり、14年からはオリエントブランドの中心的デザイナーを担う
「ダイバー1964 2nd エディション」は、ミラーブラック仕上げのダイヤル(左)と、つや消しのグリーングラデーションダイヤル(右)の2モデルをラインアップ。右のダイヤルは、世界有数の美しさを誇る岩手県の鍾乳洞、龍泉洞からイメージしたもの。
左:RK-AU0601B 右:RK-AU0602E 共通仕様:ケース、バンドはステンレススチール。ケース径41.0mm。自社製キャリバーF6N47 自動巻き(手巻き付)。200m 空気潜水用防水(ISO 6425規格準拠)。パワーリザーブ50時間以上。シリコンバンドが付属。


衣装協力:ジャケット¥63,800 シャツ¥24,200 パンツ¥33,000<ランバン コレクション/ランバン コレクション GINZA SIX tel.080-9645-9854> サングラス¥39,600<グレープス・アンド・セラドン/コンティニュエ tel.03-3792-8978> ※価格は全て税込

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