「目安にすべきはシチュエーション」。メンズファッションのプロに聞くこれからの仕事服の選び方
2022年3月31日
年度の変わり目は、私生活や仕事でも何かと変化が多いタイミング。この春社会人としてデビューした方、転職や異動で新しい環境になった方、会社での役職や立場が変わった方など、仕事面で新しいスタートを切る方も多いのではないでしょうか。新しい環境で自身の第一印象を大きく左右するのが服装です。そこで、これからの社会人はどんな点に注意して仕事時の服装を選べばよいか、服飾のプロである山本晃弘さんに伺います。山本さん推奨のコーディネートもぜひご参考に。
文:with ORIENT STAR 編集部
「どこに行くか、誰に会うか」で服装を決める
かつては仕事着といえばスーツであり、スーツこそがビジネスパーソンのユニフォームでした。しかし、近年は働き方や働く環境の変化により、仕事時の服装の自由度が高まっています。自由であるからこそ問われるのが、何を着るか、どう着るかという判断でしょう。30年以上にわたり、主に男性のファッションを見続けてきた服飾ジャーナリストの山本晃弘さんは、仕事服の変化をこのように感じています。
「昔のファッション誌では、よく“業界別のビジネススタイル”といった特集を組んでいました。金融ならこんな着こなし、メーカーならこんなふうに、という内容です。でも、今は業界による区分けがまったく意味を成さなくなっています。代わりに重要になってきたのがシチュエーション。その日にどこに行くか、誰と会うか、どんな過ごし方をするか、という点から服装を選ぶことが求められるようになりました。今、目安にすべきはシチュエーションです」
例えば、目上の人に会う際や重要なプレゼンがある日は正統的なスーツスタイルを選ぶ、外の現場に行く日や活動的な一日であれば動きやすいセットアップを選ぶ、というようにその日のシチュエーションを判断基準にすると良い、と山本さんは説きます。同じように、腕時計もシチュエーションに合わせて選ぶと良いそうです。
「まず前提としてお伝えしたいのが、腕時計はビジネスパーソンのマストアイテムであるということ。時計がなくても時間は分かると言う方もいますが、会議中にスマホを見ていたら、別の案件の連絡をしているな、調べ事をしているんじゃないか、などと疑われかねません。社会人であれば腕時計は必ず持つべきアイテムです。では、何を買うかとなったら、それは自分がよく行く場所、会う人、着る服に合わせて、となります。持論では、仕事の装いに“遊び”や“ハズシ”なんていりません。ビジネスシーンで着けるなら視認性の高い3針に限ります。ベルトはドレッシーな装いならレザーが調和しますが、湿度の高い日本で普段遣いするなら、水や汗に強いメタルバンドもいいでしょう」
さらに、機械式時計に対しては現代的な視点からその魅力をひも解きます。
「機械式時計は電池を使わないため環境への負荷が少なく、メンテナンスを行えば長年使い続けられるプロダクト。昨今の世界的な流れであるSDGsやサステナブルを意識して選ぶなら、やはり機械式時計になります。さらに、その機械の動きを楽しみたい場合にはシースルーケースバックのものや、ダイヤルがスケルトンタイプのものを選ぶと満足度も高まると思います」
Styling.1
アクティブな一日にはセットアップを活用
では、ここからは山本さんに、シチュエーション別のお薦めのスタイリングと、それに合わせるオリエントスターの腕時計を提案してもらいます。まずはオン・ビジネスのスタイリングから。
「一つ目は、この数年で増えた自転車通勤の方や、外の現場に行く日、活発に動く日の服装としてお薦めするスタイリングです。まず上下はネイビーのセットアップ。セットアップとは端的に言うと“コンフォタブルな着心地”を備えた上下のこと。ストレッチ素材やウォッシャブルなどの機能性を備えたもの、芯地を省いた仕立てのもの、パンツのウエスト部分にゴムやドローコードが入ったものなどがありますので、ご自身のニーズに合わせて選んでみてください」
「インナーは、カットソーを合わせてしまうとカジュアルすぎるため、襟付きのものがいいでしょう。襟付きというと鹿の子のポロシャツを着る人がいますが、これは本来スポーツ向きのウエア。同じポロシャツでも細番手のポロニットを合わせた方が上品でビジネス向きです。ロングスリーブのポロニットは一着持っていると便利なウエアですよ。足元に合わせたのはレザースニーカー。最近は白いスニーカーをよく見かけますが、ダークトーンのコーディネートに白は浮いてしまうので、ブラックやネイビーをお薦めします。差し色はバックパックで加える程度がいいと思います」
そして、そこに合わせる腕時計として山本さんがセレクトしたのは、「モダンスケルトン」です。「セットアップの色みと同じネイビーのダイヤルを選びました。モダンなデザインや、ダイヤルのオープンワークから見える機械がセットアップの軽やかな装いによく似合うと思います」。
Styling.2
優美かつ懐の深さを感じさせるブラウンの力
続いてのスタイリングはブラウンのスーツをメインにしたもの。先ほどとは打って変わって、ぐっと大人らしい印象です。
「仕事に慣れてきた20代半ばから30歳くらいの人や、会社で役職に就いてこれまでとは違った印象を出したい人に提案するのがブラウンスーツです。ブラウンはおしゃれ着の印象が強いので、ビジネスで着るなら落ち着いたダークトーンのものがベター。他のアイテムはこのブラウン特有のおしゃれ感に合わせて選ぶとまとまって見えます。シャツはタブカラーやクレリックシャツ、シャープに見せたい場合はストライプを合わせるのも良いでしょう。シューズはダブルモンクストラップの革靴やタッセルローファーのほか、スエードのチャッカーブーツなども好相性です」
「バッグやメガネ、そして腕時計などのアイテムも基本的にブラウン系でそろえると統一感が出ます。今回合わせた腕時計は『セミスケルトン』から、ブラウンカラーのダイヤルを備えたモデル。英国調のイメージが漂うブラウンダイヤルが、優美で品格のあるブラウンスーツに美しくなじみます。針などに使われたゴールドカラーは高級感もあり、役職に就くビジネスパーソンの時計としてふさわしいでしょう」
Styling.3
オフの注目は元気が出るようなマリンテイスト
最後は、今シーズンに注目したいオフタイムのスタイリングを伺いました。
「この数年は驚くほどのアウトドアブーム。といっても登山やキャンプがメインで、ウエアのカラーもベージュやカーキなどのいわゆるアースカラーが主流でした。この流れは今年も続きそうですけれど、人とは違った服装をしたい、新鮮みが欲しいということでしたら、今年は“海”に注目してみては。海をテーマとしたマリンルックの着こなしのポイントは、イエローやオレンジといったビビッドなカラーや、チェックやボーダーなどの柄物使い。着るだけで気分が明るく元気になるようなコーディネートです。もちろん街で着るのもOKです。その場合は、インナーの柄を多めに見せる、足元をアウトドアシューズからレザーのもの、例えばデッキシューズに変える、などのアレンジを加えると良いでしょう」
「海をテーマとするならば、腕時計もどこかマリンテイストが感じられるものがベストです。今回選んだのは『レイヤードスケルトン』の白ダイヤルモデル。私は“レフ板効果”と言っているのですが、白文字板には手元を明るくしてくれる効果があります。この時計も手元を明るく見せてくれる上に、オレンジのアウターの爽やかさを後押ししてくれます。小秒針やパワーリザーブインジケーター、オープンワークが並ぶダイヤルはツールっぽさもあってアウトドアの気分に合いますし、実際に海や水場に行く際には損傷の心配が少ないメタルバンドというのが心強いですね」
ビジネスの装いはその日のシチュエーションを踏まえて選び、オフの着こなしは明るく元気になるようなマリンルックを軽快に楽しむ。外出が楽しくなるこれからの季節、ぜひ着こなしの参考にしてみてください。