100分の1秒の世界で戦うカーレーサーの時間感覚とは。ナカジマレーシング・大津弘樹選手インタビュー

2022年5月26日

100分の1秒の世界でしのぎを削るカーレーサーたちは、時間をどのように感じ、また時間とどのように向き合っているのでしょうか。普段、私たちがまず意識することのない刹那の時間感覚を伺いに訪れたのは、エプソンが長年にわたりサポートしているナカジマレーシング所属の大津弘樹さんの元。2018年からスーパーGTに、そして2020年からはスーパーフォーミュラにも参戦する気鋭のドライバーです。レーサーとしての心がけ、マシンに対する思い、オフの過ごし方など、知られざるカーレーサーの世界をお届けします。

文:with ORIENT STAR 編集部



レース本番よりも準備が大事


――大津選手は2022年もスーパーGTとスーパーフォーミュラの両方に参戦されますね。普段、どんなことを心がけてレースに臨んでいらっしゃるのでしょうか。

大津弘樹さん(以下略) サッカーや野球と違ってカーレースは大会数が極端に少ないんですよ。しかもレース当日の気温や湿度、タイヤの状況などでラップタイムがコンマ1秒くらいはすぐに変わってしまう。なので、短い時間の中でいかに車のパフォーマンスを引き出すかということを常にイメージトレーニングしています。それと、そのイメージを実行できるように、例えば体力や反応速度などを普段からトレーニングしてレースに臨んでいますね。

――イメージトレーニングとは具体的にはどんなことですか。

例えば時速300kmで走っている時に何らかの物が飛んできて、それが当たったら車が破損してしまうような状況です。こういう状況、レース中に結構あるんですよ。その時にいかにスピードを落とさずによけるかということや、あとはスピンしそうな時にどう反応するかということもイメージします。スピンはドライバーにとって一番怖いんですよ。毎日のように車に乗れていれば体が覚えていくのですが、そう多くは乗れないので応用のトレーニングで補っています。

ナカジマレーシング所属の大津弘樹(おおつひろき)選手。5歳の時に父親に連れられてレーシングカートに乗ったことがきっかけでレースに目覚める。2018年からスーパーGT 300クラスとスーパー耐久ST-TCRクラスに参戦。2020年にはスーパーGT500クラス、SUPER FORMULAに出場し、ポールポジション、表彰台の登壇も経験した。2022年も両レースに参戦する


――どんなトレーニングを行うのでしょう?

冬の期間だったら北海道に行って、雪の上でいかに車をコントロールするかというトレーニングをします。雪上だとスピードが時速30~40kmしか出ないんですけれど、その速度で起こる挙動と、通常の路面を時速300kmで走った時に起こる挙動は、基本的には同じなんです。速度が速いか遅いかだけで、体感的には同じ。その感覚を養うためのトレーニングです。

――面白いですね。では、レース当日の願掛けやルーティンはおありですか。

あまりないんですよね。強いて言えば、ご飯を食べすぎないことですかね。レース前は、緊張して眠くなることがあるんですけれど、そこでお腹いっぱいに食べてしまうとさらに眠くなってしまうので。ちょっとお腹が空いているな、くらいで走ると調子がいいことはありますね。

レース前はエンジニアやスタッフなどとのコミュニケーションをこまめに行う。情報共有のほか、会話を通して自身をリラックスさせるそう

――今でもレース前は緊張されますか。

しますよ。緊張というより不安ですね。結果に対しての不安はあります。

――どうやって和らげるんですか。

いや、和らがないんですよね。なので受け止めるしかないです。レース当日の朝からずっと緊張していると疲れちゃうので、とにかく忘れることを意識しています。スマホを見たり、誰かに連絡したり、トレーナーやチームメンバーと話をして、頭から忘れさせて、いざ車に乗り込む時に一気に集中できるように、ということは心掛けています。

0.05秒の違いが分かるほど研ぎ澄まされる


――いざ車に乗り込むと、否が応でも緊張が高まりそうですね。一緒にレースを戦うレーシングカーというのは大津さんにとってどんな存在ですか。

そうですね。例えば走行前に車に乗り込んでちょっと確認したい時なんかは、普段履いている靴は脱いでから乗り込みます。土足禁止というのが暗黙のルールじゃないですけれど、レーシングシューズ以外では乗り込まない。それぐらい大事な存在です。

――ある種、神聖な場所なんですね。車と一体感を感じる瞬間はありますか。

一体になれる時というのはやっぱりありますね。手足のように操作できたり、自分の行きたい所にぴったり行けたり。本当に数ミリの差でも調子がいいというのが分かるんですよ。小石に乗らないようにギリギリでよけたい時も、車が感覚的に手足のように動くんです。反対に、そこがあまり合わない時もあって、その場合は何をしても予想を下回る結果になっちゃう。調子によって大きく変わるなと思います。

レーシングカーに乗り込んだ大津選手。エンジン音のボリュームもいよいよ最高潮へと達し、こちらにも緊張感が伝わってくる


――その調子を左右しているものは何でしょう?

レースの車は、ハンドルから多くのパーツを経てタイヤが動くわけなので、その何かが0.1ミリでも違うと、そのずれがどんどん大きくなってしまうんです。なので、テスト期間に数ミリ単位で変更を加えながら走行して、データを蓄積していくという作業がとても大事で。準備段階が本当に大切ですね。

――では、実際にレースをしている際の時間感覚というのは、どんなものでしょう?

イメージ的には、自分の体内時計が研ぎ澄まされる、という感じですかね。例えば1周6kmのコースを走っていて、体内時計が合ってくると「今のミスで0.05秒遅れたな」というのが分かるんですよ。1周をだいたい1分30秒で走るんですけれど、そのうちのわずか0.05秒の誤差が感じられるようになるんです。

――それはすごい! 主観的な時間と客観的な時間がぴったり一致しているということですね。

はい。ただ、この体内時計の感覚は場数や経験によって高まっていくものだと思います。僕も5歳からレースをやってきたので感覚的に分かるんですね。レーシングドライバーは皆そこが優れていると思いますよ。


この日はシーズン前のファン感謝デー。テスト走行でも迫力十分。観衆を大いに沸かせた


――反対に、体内時計とラップタイムが合わない時もあるんですか。

正直、ありますよ。自分ではすごくうまく走れているのに、「なんでタイムがこんなに遅いんだ?」という時があります。理由として多いのは、コーナリングは決まっているけれど、ストレートが伸びていないこと。コーナリング中は常に限界のラインを攻めているので、「今、限界超えたな」とか、逆に「限界に届いてない」とかが分かるんです。でも、ストレートになると、時速1kmの違いというのは人間にはほぼ分からないんですよ。そこで体内時計が狂ってしまうことはありますね。

――なるほど。では、時間の経過についてはいかがでしょう? 今日は時間の経過が速いな、あるいは遅いなと感じることはありますか。

それもありますね。やっぱりつらいコンディションの時は遅く感じますし、あとは後続に追われている時も長く感じますね。例えば、残り3周でトップを走行中、でもすぐ後ろにぴたっと付かれていて、しかも相手の方がタイムがいいという時。相手はこちらの隙をつくるために、3、4個手前のコーナーから戦略を組み立てて揺さぶりを掛けてきます。僕は抜かれまいとそれをブロックする。互いに優位なラインの取り合いというか、そういう駆け引きをしていると時間がとても長く感じます。まだ3周もあるのかって思いますよ(笑)。


気分を上げてくれる重要なツール


――続いてオンとオフについて伺いたいのですが、そもそもオン・オフという意識はおありですか。

あると思います。あ、どうだろう。体は休んでいますけれど、頭の中ではずっとレースのことを考えているかもしれないです。悔しい結果になったレースはもちろん、優勝したレースの後も振り返ったりしますね。

――優勝しても悔しいんですか。

優勝したらもちろん嬉しいですよ。でも、なんで勝てたのかという分析をしたり。

今年28歳を迎える大津選手。世界の第一線で戦うレーサーでありながらどこかあどけなさも残る。5歳でレースを始めてから、毎週のようにコースに出るレース漬けの毎日を送ってきたそう


――頭の片隅にはいつもレースのことがおありなんですね。すると、オンからオフへの切り替えの時に意識的に何かをするようなこともないですか。

オフへの切り替えかどうか分かりませんが、レースが終わった日の夜は好きなものをたらふく食べる、ということですかね。普段は、体重をなるべく軽くしておきたいので、カロリー計算をして食べ過ぎないようにしているんですけれど、レース後の夜だけは別。ラーメン食べよう、カレー食べたい、というのはちょっとした楽しみです。トッピングとか考えながら。

――今、オンの時にはオリエントスターの「アバンギャルドスケルトン」をよく着用していただいていると伺っていますが、なぜこのモデルを選ばれたのでしょう?

この時計の色合いがスーパーGTで乗る車の色に近かったんです。バンドとかケースの部分の赤と黒が気に入って。時計はそれほど詳しくなかったので見た目で選びました。それに、スーツを着ることがたまにあるのですが、その時にこれを着けたら格好いいんじゃないかなとも思って。実際に着けてみるととてもマッチして格好いいです。奥さんも「いいね」と言ってくれました。


赤と黒の色合わせがレーシングスーツにもマッチ。「このパンチングメタル風のバンドもいい具合に馴染んできました」と気に入ってくれている模様


――聞くところによると、初めての機械式時計だそうですね。

そうなんです。最初の頃は自動巻きというのもよく分かっていなくて、時計を振らないと動かないと聞いてずっと振っていました(笑)。この時計は機械が見えるようになっているのも良くて、分からないながらも「すごい仕組みだな」と思いながら見ています。

――腕時計でオン・オフを切り替えるという人も少なからずいますが、大津さんにもそういった部分はありますか。

この時計を着けるとやっぱり気分が上がりますね。レースの車の色と似ているということもありますし、普段はこれほどいい時計を着ける機会が少ないので。だからとても大事にしています。


文字板をスケルトン加工して、内部機構を大胆に見せた点が「アバンギャルドスケルトン」の特長。アグレッシブなモータースポーツの世界観にもよく似合う


――ありがとうございます。大津さんは、時計選びの際もレースのことを意識してしまうほどの、根っからのレーサーなんですね。

そうですかね。でも、最近は趣味をつくろうと思って頑張っています。キャンプを始めたいなと思って、今はずっとキャンプ用品を見ていますね。レース後に静かな森の中で振り返るのもいいかなと思って。レースの映像やデータは全て僕らのパソコンに共有されるので。

――やっぱりレースから離れられそうにありませんね。そんな生粋のレーサー、大津さんのレースを今年もwith ORIENT STAR編集部一同で応援しています。今日はどうもありがとうございました。




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