熟練フォトグラファーの審美眼にかなった造形の美。ファインダー越しに見た「ダイバー1964 1stエディション」の魅力
2023年2月28日
オリエントスターが1964年に発表した時計のデザインと、現代のダイバーズウオッチの基準を満たす性能を融合させたのが、2021年に登場した「ダイバー1964 1st エディション」です。この春、このモデルが新しくシルバーの文字板を携えて登場します。そこで今回、この時計の魅力を探るべくお話を伺ったのが、15年以上にわたりオリエントスターの時計を撮影するフォトグラファーの栗村昇さん。ファインダー越しに数々の時計を熟視してきた目利きならではの審美眼をお聞きします。
時計撮影の第一人者が認める個性的なデザイン
「昔から日本のブランドだと知っていましたけれど、実際に時計を目にしたのは今から15年前くらいですかね。第一印象は、カラーや造形が個性的でこんなデザインの時計ブランドが日本にあるんだ、という発見のような感覚です。しかもクオーツではなく機械式時計で、裏蓋がシースルー仕様のものもあって、それなのに価格も良心的で。驚いたことを覚えていますよ」
オリエントスターとの出会いをそう振り返るのが、フォトグラファーの栗村昇さんです。栗村さんは日本大学芸術学部を卒業すると、すぐに都内のスタジオでフォトグラファーとしてデビューします。主に菓子をはじめとする食品の商品撮影を行っていましたが、30代になってスタジオを転籍すると、腕時計や宝飾品、化粧品といった、いわゆる“光り物”の撮影を任されるようになります。
「貴金属や丁寧に磨かれた金属の表面は、言ってみれば鏡のようなもので、周囲のあらゆるものを映してしまうので撮影が難しいんですよ。当時はそういう光り物の撮影の経験者もあまりいなくて、テクニックを教えてくれる人もいなかったので、全て自分で試行錯誤しながら一つずつ考案していった感じですね」
ほとんど独学だったという栗村さんの時計撮影ですが、そのクオリティーはたちまち雑誌業界で評判となります。ファッション誌をはじめさまざまな媒体で撮影を行うほか、1990年代後半からはスイスで開かれていた世界最大(当時)の時計見本市、バーゼルワールドの取材にも同行して現地で時計撮影を行ったそうです。1980年代のスイスは、クオーツ時計の台頭により衰退していた機械式時計産業を復興しようとする動きが起こった時代で、1990年代になると日本でも再び機械式時計が日の目を浴び始めます。日本での機械式時計の人気再燃に、写真ビジュアルの分野から貢献されたフォトグラファーの一人が栗村さんだったのです。
「その頃にはいろいろな経験を積んで、どんな時計がきてもある程度は撮影できるという自信がついていました。ただ、2007年頃でしたかね。最初にオリエントスターの時計を撮影した時は苦労しましたよ。先ほどデザインが個性的とお話ししましたが、言い換えればデザインが複雑なものが多いということ。そのためストロボの光がなかなか届かない箇所があったり、反対に光りすぎてしまう箇所が出てきたりするんです。それを何とか美しく収めるために、それまで以上にシビアにセットを組んだ記憶がありますね。以降、現在まで撮影させてもらっていますが、いつも心がけているのは“丁寧に、忠実に、魅力的に”ということです」
“美しいダイバーズ”がシルバー文字板でより洗練された
オリエントスターを15年以上も撮影し続ける栗村さん。何百、何千の時計と向き合う中で、ご自身の趣味嗜好にグッとはまった印象的なモデルがいくつかあるそうです。その一つが2021年に発売された「ダイバー1964 1st エディション」でした。
「私が人生で最初に手にした機械式時計が、祖父から父、父から私へと受け継がれた防水時計だったんです。だからダイバーズウオッチにはもともと思い入れがありました。なおかつ私は1964年生まれ。だから“ダイバー1964”と聞いただけで運命的なものを感じてしまって。その後、時計を見ていくとデザインやサイズも自分好みでしたね」
ダイバー1964 1st エディションは、オリエントスターが1964年に発表した「オリンピアカレンダーダイバー」(現在は販売終了)に着想を得た時計です。1960年代の日本といえば高度経済成長の最中で、毎日が新しく活気に満ちた時代でした。人々は海や高原のレジャーを楽しむようになり、街とリゾート地を行き来するようになります。そうしたライフスタイルに合わせて、都会向けのエレガンスとアウトドアにふさわしいスポーティーさを併せ持つ時計としてつくられたのが、オリンピアカレンダーダイバーでした。その当時のデザインを踏襲しながら、現代のダイバーズウオッチの基準を満たす性能へとブラッシュアップしたのが、ダイバー1964 1st エディションです。
「1964年製の時計をベースにしていると聞いて納得しました。よく見かけるダイバーズウオッチとは違って、いい意味でダイバーズっぽくないんですよ。ケース径も一般的なものに比べたら小さいし、ベゼルも通常は黒くするのにこちらはシルバーです。ケースやブレスレットの磨きもきれいで、ダイバーズウオッチらしからぬ繊細さ。ダイバーズなのに美しい、という印象でした」
2021年にブラックの文字板を備えて誕生したダイバー1964 1st エディションに、この春、新しくシルバー文字板を備えた新作が登場予定です。栗村さんはこの新作を、「デザインの特徴がより実感できるモデル」と評します。
「昨年のモデルは文字板がブラックだったので、ダイバーズウオッチらしさが多少はありましたが、今回のモデルはシルバー文字板なのでよりエレガントな印象です。シルバーと言っていますが、少し黄みがかったような温かみのある色合いで、とても優しげ。光の当たり方や見る角度によって色みが微妙に移ろって、とてもきれいに仕上がっていると感じました。撮影する方は難しいんですけれどね(笑)」
実際に撮影してみると、ディテールの美しさに驚かれたそうです。
「立体的なインデックス、放射状のパターンが施された文字板、そして山型にカットされた時分針……など、ファインダー越しに寄って見たらつくりがとても丁寧できれいなんですよ。そういったディテールの美しさも含めて、“写真写りがいい時計”というんですかね。数百万円もする時計には写真写りがいいものもありますが、オリエントスターの価格帯では極めて珍しいと思いますよ」
そして何より栗村さんが注目したのは、その汎用性の高さです。
「私だったら撮影の時はもちろん、バイクに乗る時、ちょっといいレストランに行く時など、どんなシチュエーションでも着けられそうです。何なら冠婚葬祭にだって対応できそうですし。れっきとしたダイバーズウオッチなので、多少ハードに使ったり水に濡れたりしても安心なのがまたいいですよね」
街でもアウトドアでも着けられる時代のライフスタイルに合った時計を、という1960年代の開発者たちの思いは、それからおよそ60年の時を経て、折しも2020年代に生きる私たちのニーズをも満たすことになりました。ダイバー1964 1st エディションは、オンとオフの境がシームレスになった現在だからこそ重宝する、シーンを問わずに着用できるダイバーズウオッチです。